CIEDs 植込み型心臓電気デバイス / RMS 遠隔モニタリングシステム

ペースメーカー

心臓の電気信号の異常によって、脈が乱れてしまう病気を不整脈といいます。
中には、脈が遅くなる「徐脈」、脈が速くなる「頻脈」、脈がとぶ「期外収縮」があります。
徐脈性不整脈では、酸素を含んだ血液が脳や身体に十分に送られなくなり、めまいや疲労を頻繁に感じたり、場合によっては失神に至ることもあります。
ペースメーカーは、徐脈性不整脈を対象とした治療で、鎖骨の下の皮下に留置した本体と、静脈(鎖骨下静脈、腋窩静脈など)から血管内を通して心臓内に挿入した1~2本のリード線で構成されています。
リード線から得た情報を元に、必要に応じて本体で発生させた電気刺激をリード線を通じて心臓に伝え、心臓を動かします。これにより徐脈になることを防ぎます。

電池寿命は10年前後で、植込み後は6か月~1年に1回、外来で検査を行っています。
当院では、ペースメーカー本体とリード線が一体化したカプセル型の「リードレスペースメーカー」手術も行っています。

ペースメーカー植込みイメージ

ICD・S-ICD

植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)は、致死的不整脈を治療する体内植込み型装置です。

心室頻拍や心室細動などの命に関わる不整脈を自動的に感知し、抗頻拍ペーシングや電気ショックを行うことで、不整脈を停止させます。
ICD自体は不整脈を予防するものではありませんが、致死性不整脈を停止させることにより、心臓突然死を防いでいます。

植込み型除細動器本体と1~2本の電極リードにより構成され、徐脈に対するペースメーカー機能も持ち合わせています。

また、2019年4月からは、皮下植込み型除細動器(S-ICD)を導入しています。
こちらは従来の植込み型除細動器と異なり、リード線は前胸部の皮下に、本体は側胸部の皮下に植え込まれます。
そのため、手術時の合併症の軽減や遠隔期における感染のリスクを大幅に低減させる可能性があります。

その反面、ペーシング機能を持ち合わせていない為、徐脈性不整脈症例や抗頻拍ペーシングで停止可能な心室頻拍を有する場合などには適しておらず、疾患を選択して使用する必要があります。

経皮的植込み型除細動器(TV-ICD)
植込みイメージ

皮下植込み型除細動器(S-ICD)
植込みイメージ

CRT・CRTD

心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)は、薬物治療によって症状の改善しない重症心不全患者さん対するペースメーカー療法で、心臓のポンプ機能の改善を目的とした治療です。

正常な心臓では、効率よく血液を全身に送り出すために心房から心室へ電気信号が伝わっています。
しかし、心臓に何らかの障害が起こることで心臓の中で電気信号の伝わる順序にずれが生じることがあり、右心室と左心室間に収縮のずれが生じることを心室同期障害と言います。
高度に心臓の機能が低下している場合に心室同期障害が加わると、心不全を引き起こす、もしくは心不全をさらに悪化させてしまう可能性があります。
このような場合に、右心室と左心室(冠状静脈)にペースメーカーリードを挿入し、リード線からタイミング良く電気刺激を行うことで収縮のタイミングのずれを是正し、ポンプ機能の改善をはかっています。

心室同期障害に加え、致死性不整脈(心室頻拍・心室細動)の既往がある、もしくは今後起こる可能性の高い患者さんは、心臓再同期療法に合わせ、ICDの機能も備えた両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の植込みを行います。

提供 日本メドトロニック

ICM

ICMは、3~5.5年と長期にわたって、心電図を24時間365日継続的に見守ります。

常に心電図を監視していることで、失神が起こった際の心電図を記録しておくことができ、失神が心臓に由来するものか、心臓以外に原因があるのかを判断する上で、非常に重要な情報となります。
2018年からは、潜因性脳梗塞(原因不明の脳梗塞)の心房細動診断に対しても適応となっており、脳梗塞の発症の原因が心房細動によるものか診断するのに非常に有用です。

植込み手術にかかる時間は約10~20分と短時間で、局所麻酔下に左前胸部の皮膚を1cm程度切開し、機器を皮膚の下に挿入します。 外来での植込み手術が可能で、植え込み当日よりMRI撮像可能となっております。

ICM植込みイメージ

遠隔モニタリングシステム(Remote Monitoring System:RMS)

遠隔モニタリングシステムは、ペースメーカやICD、CRT-Dなどの植込み型デバイスの情報(データ)を、携帯電話回線を通じて、自宅など離れたところから、医療施設へ送ることができるシステムです。

専用の機器を設置しておくことでデバイス情報(電池寿命・リード線の状態、不整脈の有無など)が送信され、レポート化されます。
病院職員は、セキュリティ対策された専用のウェブページを通じて、その情報を閲覧することができます。

遠隔モニタリングのイメージ

遠隔モニタリングのイメージ

遠隔モニタリングシステムのメリット

1.

植え込みデバイスやリード線の異常の早期発見が可能

電池残量や急な設定変更、リード断線など命に関わる異常が早期に分かる

2.

不整脈の早期発見が可能

新規心房細動や致死性不整脈が発生した際に早期に対応が行え、電話で症状の確認や必要に応じて早期の外来受診の調整が可能

3.

植え込みデバイスの外来検査受診回数を減らせる可能性がある

毎月1回の定期送信や緊急アラート送信で異常の有無が分かるため、外来受診の間隔を長くすることが可能

4.

植え込みデバイス検査時の時間を短縮できる可能性がある

事前にデータを確認できる為、外来デバイス検査の時間短縮が可能

注意点

遠隔モニタリングシステムは緊急対応を目的としたものではありません

緊急時、身体に異常を感じた場合は、かかりつけの病院への受診をご検討ください。

当院の体制

当院では、2010年より、植え込み型デバイスの遠隔モニタリングシステムを導入し、現在は、約700人(2022年8月現在)の方に使用していただいております。
月に1回の定期送信と、個別に設定した緊急アラート送信を確認しながら、各分野の専門家が緻密に連携をとり、不整脈や異常の早期発見、早期対応が出来るようチームで対応しております。

また、異常を早期発見するには、未受信(データが送られてこない)をいかに減らせるかが、重要です。
当院では、地域の医療福祉スタッフとも積極的に連携をとり、ご協力いただくことで、未受信への介入率は100%を維持することができております。