MICS -低侵襲心臓手術-

低侵襲とは、身体に負担の少ない手術という意味です。

外科的心臓手術の一般的なアプローチ方法である胸骨正中切開は、胸骨を20~25cmと大きく切開する為、心臓から大血管に至るまで手術時の視野を確保することが可能で、心臓手術のスタンダードなアプローチ方法となっています。

MICS(ミックス)は手術創が6~10cm程度と小さく、小さい切開創から手術を行うため、視野が狭い、治療部位までの距離が遠くなるなど、技術的には難しい手術となっています。
その為、MICSを行うには、経験豊富な手術チーム(心臓血管外科医、麻酔医、手術室看護師、臨床工学技士)の連携が非常に重要であり、当院ではチーム一丸となって質の高い低侵襲心臓手術を行っております。

術後の傷跡

胸骨正中切開

胸骨正中切開

胸骨部分切開

胸骨部分切開

右肋間小開胸

右肋間小開胸

2016年~ 胸骨部分切開による大動脈弁置換術(MICS-AVR)

2020年~ 右肋間小開胸による僧帽弁形成術(MICS-MVP)

を開始しました。

胸骨正中切開
胸骨部分切開(逆L字)
右肋間小開胸

MICSのメリット

◇傷が小さく、目立ちにくい

◇早期のリハビリが可能

◇術後の運動制限が少ない

◇早期の仕事復帰が行いやすい

などの点が挙げられ、患者さんの術後に大きなメリットがあります。

MICSのメリット

対象疾患

・大動脈弁閉鎖不全症

・大動脈弁狭窄症

・僧帽弁閉鎖不全症

手術用顕微鏡(ORBEYE)を用いることで、先端のカメラから、4K3Dの高精細な映像をモニターに送出でき、手術室内のスタッフ全員で術野の画像を共有することで、小さな切開創からでも、より安全に手術を行うことが可能となっています。

手術用顕微鏡(ORBEYE)

ORBEYEを用いた右肋間小開胸手術

ただし、MICSは全ての患者さんに行える手術ではありません。

下記の場合は、MICSが適していないことがあります。

・大動脈の性状の悪い方

・心肺機能が低下している方

・患者さんの体格 漏斗胸や側弯症など

小切開で手術することで、手術時間や心臓を止めている時間が長くなる場合があり、特にリスクが高い患者さんには、MICSによる手術よりも胸骨正中切開での手術の方が、より安全に治療を行える場合があります。

逆に条件さえ整っていれば、ご高齢の方でもMICSによる治療は可能です。

当院では患者さんの全身状態を総合的に判断し、安全で適切な治療法をご提案しています。